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東京地方裁判所 昭和28年(モ)13199号 判決

当裁判所昭和二八年(ヨ)第二〇四八号職務執行停止等仮処分申請事件について昭和二十八年五月二十日当裁判所がした仮処分決定を取消す。

訴訟費用は被申立人等の負担とする。

本判決は第一項に限り仮に執行することができる。

二、事  実

申立人等訴訟代理人は主文第一項及び第三項同旨の判決を求め、その申立原因として、

「一、被申立人等の申請による、当庁昭和二八年(ヨ)第二〇四八号職務執行停止等仮処分申請事件につき昭和二十八年五月二十日当裁判所がした仮処分決定により申立人影山桓虎は東京航空株式会社の取締役兼代表取締役の、申立人高橋三郎、同松波碇四郎及び同菊池卓三は同会社の取締役の、申立人石川四郎は同会社の監査役の各職務の執行を停止され、取締役兼代表取締役の職務代行者に弁護士伊勢勝蔵が、取締役の職務代行者に弁護士橋本武人及び同若林清が、監査役の職務代行者は弁護士岡弁良が選任された。

二、被申立人等の右仮処分申請の理由とするところは、取締役に被申立人相羽有、申立人影山桓虎、同高橋三郎、同松波碇四郎及び同菊池卓三を、監査役に申立人石川四郎を選任する旨の昭和二十七年十二月十六日の右会社の臨時株主総会決議及び代表取締役に被申立人相羽有及び申立人影山桓虎を選任する旨の同日の右会社の取締役会決議並びに取締役相羽有を解任する旨の昭和二十八年一月十日の臨時株主総会決議はいずれも不存在であるに拘らず、申立人等は右決議に基く権限ありとしてそれぞれその職務を執行し、かつ、その選任登記がなされているから、その職務執行停止の仮処分を求めるというにあつたのである。

三、しかるに、別に被申立人等が当裁判所の総会招集許可(商法第二三七条所定)決定をえて株主として自ら招集した同年四月八日の総会の続行総会である同年五月十三日の総会の決議により被申立人相羽有、申立外林甚之亟、同森良作及び同根岸真太郎が取締役に、申立人石川四郎及び申立外高橋義次が監査役に選任され、同日の取締役会の決議により被申立人相羽有が代表取締役に選任された。

四、他方職務執行停止前代表取締役影山桓虎の招集にかかる右会社の昭和二十八年六月二日の定時株主総会において取締役及び監査役の全員を解任して、取締役に申立人影山桓虎、同高橋三郎、同松波碇四郎及び同菊池卓三を、監査役に同石川四郎を選任する旨の決議が行われた。

五、然し以上の各株主総会決議及び取締役会決議の効力については本件の当事者間その他に争があり、依然として前記各職務代行者等によつて会社の業務執行がなされていたところ、申立人影山桓虎、同松波碇四郎及び申立外影山銑三郎は、当裁判所の株主総会招集許可(商法第二三七条所定)決定に基いて株主により招集された同年十月二十日の総会において、前記二の昭和二十七年十二月十六日の、前記三の昭和二十八年五月十三日の及び前記四の同年六月二日の各総会決議において選任された取締役及び監査役全員を解任し、改めて取締役に申立外影山銑三郎、同手塚誠、申立人影山桓虎、同高橋三郎及び同松波碇四郎を、監査役に申立人石川四郎を選任する決議がなされ、同人等はいずれもその就任を承諾し、次で同日取締役会において代表取締役に申立人影山桓虎及び申立外影山銑三郎を選任する決議がなされ、同人等は就任を承諾した。

六、以上のとおり、本件仮処分の理由とされた事情は、その後行われた右昭和二十八年十月二十日の総会決議による有効な取締役及び監査役の選任並びに取締役会決議による代表取締役の選任により変更され、同日以後本件仮処分決定の意義は失われるに至つたので本申立に及んだ。

なお、被申立人主張事実中被申立人相羽淑、新部恒五郎及び申立外藤田興業株式会社等が右会社の株主であることを否認し、被申立人等主張の株主総会決議取消の訴が当裁判所に係属中であることを認める。」と述べた。<立証省略>

被申立人等訴訟代理人等は、申立人等の申立を棄却するとの判決を求め、その理由として「申立人等主張の一乃至五の事実は認める。但し、昭和二十八年六月二日の総会決議は、同年五月十三日の総会決議により解任された影山桓虎が代表取締役として招集したものであるから、法律上不存在のものであり、同年十月二十日の総会決議は次の理由で取消されるべきものである。即ち同総会には株主である被申立人相羽淑、新部恒五郎及び申立外藤田興業株式会社に対する招集通知がなく、且つ、同会社の発行済株式総数二万五千株のうち右株主等を除く六千三百六十株の株主等の出席があつたのみで取締役及び監査役の解任に必要な定足数を欠いていたから、同総会決議は違法である。よつて被申立人等は右総会決議取消の訴を当裁判所に提起し、現に係属中である。故に本件仮処分決定はなお維持する必要があり、申立人等の本申立は理由がない。」と述べた。<立証省略>

三、理  由

申立人等主張の一乃至五の事実は被申立人等の認めるところである。然らば、申立人等主張の東京航空株式会社の右総会決議のうち最後のものである昭和二十八年十月二十日の総会における取締役及び監査役の各解任及び選任決議が有効のものである限り、本件仮処分により職務執行を停止された取締役及び監査役を含む従前の取締役及び監査役は解任され、その地位を主張して職務の執行をすべき係争の権利関係自体が消滅し、新に選任された取締役及び監査役においてその任に当るべきものであるから、も早前記仮処分を存続するのは不当に帰するものというべきところ、被申立人等は、右総会決議は総会の招集手続にかしがあり又出席株主数が法定の定足数に欠け、従つて違法なもので、取消すべきものであると主張する。しかし、総会決議に取消事由にあたるかしがあるというだけでは、同決議を直ちに無効として取り扱い、その無効を前提とする法律関係を是認することができない。他に同決議が法律上の不存在であること又は無効であることの事由について主張がないので、同決議の効力を否定し得ないものというの外なく、本件仮処分はも早その存続を許すべきでないといわなければならない。

尤も右総会決議取消の訴が被申立人等から提起され、当裁判所に現に係属中であることは当裁判所に顕著であつて、同訴訟において右決議が将来取消される場合に生ずることのあるべき損害を防止するため、新に保全処分を必要とする事由の発生することも考えられるが、この事由は、既に発せられた本件仮処分を必要とする事由とは全く別個のものであるから、前記保全処分を必要とする場合があり得ることは本件仮処分を存続させる理由とはならない。

よつて本件仮処分決定は事情の変更により取消すべきものとし、民事訴訟法第七百五十六条、第七百四十七条、第七百五十六条ノ二及び第八十九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 小川善吉 畔上英治 宮本聖司)

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